研究課題/領域番号 |
22700760
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
河原田 律子 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 助教 (60383147)
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キーワード | 糖尿病 / 妊娠 / 魚油 / インスリンシグナル |
研究概要 |
遺伝性の強い疾患は、DNAを介して子孫に伝わるのが一般的である。しかし、遺伝的背景が全く無くても、子や孫に親の疾患の影響が及ぶことが明らかになってきた。本研究では、ストレスプトゾトシン処理により人工的に発症させた糖尿病妊娠モデルラットから生まれた仔・孫への親の糖尿病の影響を検討した。さらに、妊娠期に魚油を投与することで、仔へ及ぼす影響を検討した。その結果、生まれたすべての仔ラットは見かけ上正常であったが、糖尿病仔ラットでは心臓や骨格筋のインスリンシグナルに異常が認められた。一方、妊娠期に魚油を与えた場合、仔ラットのシグナルが改善したことが示された。そこで、さらに魚油の効果を検討するために、魚油の主要成分であり心血管イベントの改善薬として注目されているエイコサペンタエン酸(EPA)を妊娠期に投与し、仔へ及ぼす影響を分子レベルで解析した。 新生仔ラットの血糖値・中性脂肪値は4群ともに正常であったが、体重は糖尿病群では低下した。心臓重量は差はなかった。糖尿病ラットから生まれた仔のインスリンシグナル(AktやGlut4)はコントロールラットと比較して異常を示したが、EPAを投与した仔ではそれらに改善傾向が認められた。 これまでの研究で糖尿病モデルの親から生まれてきた仔の心臓や骨格筋ではインスリンシグナルの低下が見られた。このことから、妊娠期に胎児が高血糖にさらされた場合、生まれてきた子供のインスリン抵抗性が惹起される可能性が示された。ところが、妊娠期にEPAを摂取した場合、インスリンシグナルが上昇したことから、母親の妊娠期のEPA摂取は仔のインスリン抵抗性を改善する可能性が示された。今後は、さらに詳細に検討し、EPAの食事療法への有用性を検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度計画では糖尿病妊娠モデルラットのシステムを確立し、糖尿病群とコントロール群のそれぞれより生まれた仔の新生仔から心臓を摘出し、全RNA、miRNA、蛋白質をそれぞれ単離し、それぞれの分子の発現プロファイリングを行った。生まれた仔は血糖値、コレステロール値など血液生化学的な検査をし、糖尿病の発症を確認した。計画通りに研究を進められたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
24年度も、継続して網羅的解析による遺伝子発現プロファイリングを行う予定である。 糖尿病の親とその生まれた子供、孫の世代間での網羅的遺伝子プロファイリング(発現遺伝子解析およびmiRNA発現解析)と機能性プロテオミクスを組み合わせて行い、次世代に受け継がれる情報を整理して基本データから、子孫へと見えない形で受け継がれる糖尿病の形質の分子カタログを作成する予定である。
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