研究概要 |
イソフラボンの過剰摂取は内分泌撹乱のリスクがあることから摂取基準が定められている。大豆イソフラボンには、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテイン、およびこれらの配糖体が存在するが、腸管における吸収率に関しては同等とされ区別されていない。本研究では、構造別イソフラボンの詳細な消化管吸収機作を解析し、吸収特性を比較検討することを目的とした。消化管吸収機作の解析には腸管のモデルとしてヒト結腸がん由来Caco-2を用いた。速度論的に透過機作を解析した結果、大豆イソフラボンアグリコンは、pH依存型の高い吸収特性を示した。Caco-2における物質の吸収は受動輸送と能動輸送の両経路が混在している。そこで、受動輸送のみを観察することができる人工脂質膜(Parallel Artificial Membrane Permeability Assay, PAMPA)を用いてこれらアグリコンの吸収性を調べた。イソフラボンアグリコンは、PAMPAにおいても効率的に吸収されたことから、受動輸送において高吸収性を示すことが示唆された。これらのイソフラボンアグリコンは実際の消化管内でも高吸収性を示す可能性が高いことから、摂取する際には注意が必要である。また、イソフラボン以外のフラボノイドアグリコンの詳細な透過機構を同様にして解析した。フラバノンのPAMPAにおける透過速度は化学計算ソフト(Marvin Sketch program : http ://www. chemaxon. com/marvin)によって算出されたlogD値と正の相関を示した。Caco-2およびPAMPAにおいてpH依存型の透過性が観察され、計算ソフトによる分子型存在比より、これらの化合物はpH分配仮説により速やかに受動輸送されていることが示唆された。
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