女性ホルモンであるエストロゲンは、乳癌、子宮内膜症をはじめとするホルモン依存性疾患のリスク因子の1つであると言われている。エストラジオール(E_2)は、乳腺などのエストロゲン標的臓器において、シトクロムP450 1A1(CYP1A1)およびCYP1B1により、カテコールエストロゲンの2-OHE_2、4-OHE_2にそれぞれ代謝された後、生じたキノン体がDNA付加体を形成し、発癌性を示すことが明らかにされている。 本研究では、エストロゲンおよびエストロゲン代謝物のDNA損傷に対する影響を明らかにするため、E_2およびカテコールエストロゲンの脱プリン部位(AP site)生成について検討を行った。ヒト乳がん細胞MCF-7にE_2、2 -OHE_2、4-OHE_2を添加し一定時間インキュベートした後、細胞を回収した。また、1時間前にCatechol-O-methyltransferase (COMT)阻害剤(Ro 41-0960)にて前処理を行った。回収した細胞からDNAを抽出し、DNA塩基損傷部位検出キットを用いてAP site生成量を測定したところ、E_2、2-OHE_2処理ではCOMT阻害剤添加の有無にかかわらずAP siteの生成は見られなかった。一方、4-OHE_2処理ではCOMT阻害剤存在下、非存在下共にAP site生成量は有意に増加し、その後経時的に減少した。エストロゲン代謝物のうち4-OHE_2は、解毒代謝に重要なCOMTの阻害により、脱プリン反応に伴うDNA損傷をより高めることが示唆された。
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