これまで、優れた非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデル動物を開発してきた。この動物は、高脂肪・コレステロール(HFC)食の比較的短い期間の摂取で、NASHのほぼ全てのステージ(脂質沈着・炎症・線維化による偽小葉形成)に進展する。NASH進展に脂肪とコレステロールのどの成分が主要な役割を担うのか興味が持たれる。そこで、まず、摂取するHFCの量を段階的に変化させることにより、HFCがNASH進展に及ぼす役割を明らかにする。 Arteriolipidosis-prone rats (ALR)は脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)の亜系統であり、金城学院大学のSPF施設で、系統維持している。動物は雌性ALR10週齢を、餌はHigh Fat Cholesterol (HFC) dietとコントロールとしてSHRSP系統の普通食として使用されているSP dietを用いた。これらの餌の比率を変えてHFC食:SP食の比率を(1)100:0、(2)50:50、(3)10:90、(4)0:100とし、8週間与えた。 肝機能の指標であるAST、ALT値は、HFC dietの比率が高くなるに従い、上昇した血清TC値はHFC dietの比率が高くなるに従い、上昇した。しかし、血清TG値は低下した。組織学的検討として、H&E染色の結果、HFC dietの比率が高くなるに従い、肝臓への脂質沈着の増加が認められ、肝臓中と血中のTG動態の異常が考えられた。また、線維化を検討するため、アザン染色を行なった。HFC:SP、50:50から線維化が認められ、100:0では更に病態が進行した。これらの結果、HFC dietの量依存的に肝障害の悪化が認められた。また、HFC:SPが50:50の時、肝臓への脂質沈着や線維化などの症状が確認でき、かつ、進行前期の状態であることが考えられ、今後の活用に期待される。
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