本研究では、食品による効果的な食物アレルギー症状の改善を目的とし、食物アレルギーの治療法のひとつである減感作療法に用いるアレルゲンの投与方法について、検討を行っている。本年度は、卵白アレルゲンであるリゾチーム(LY)をマウスに投与し、食物アレルギーの誘導とその症状の程度を評価できる実験系を構築した。まず、B10.AマウスにLYを腹腔投与することによりアレルギー状態にしておき、その後、LYを100mg経口投与すると直腸温度の低下、運動量の減少、痙攣などのアナフィラキシーショック症状が観察された。また、このアレルギーマウスに、減感作を目的として0-20mgのLYを10日間経口投与し、その後同様にLYを100mg経口投与すると、20mg投与群でアナフィラキシーショック症状の改善が見られた。また、このとき糞中IgAが顕著に増加しており、ショック症状の改善に関与しているものと推察された。以上の結果から、この実験系を用いることにより、減感作用LYにさらに、様々な加工(加熱や酸、アルカリ処理による変性、または糖などによる修飾、さらには、他の食品成分との混合摂取)を施して検討し、未変性のLYを投与した場合よりもショック症状が軽減されたかどうかを評価することが可能となった。食品による効果的な食物アレルギー症状の改善方法を模索するにおいて、最も重要な評価系の構築ができたという点で、意義のある研究成果が得られた。
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