本年度は、平成22年度に確立したアレルギーモデルマウスを利用して、リゾチームアレルギーマウスに治療用リゾチームを経口投与し、その後に誘導するアナフィラキシー症状が改善されるような投与方法を検討した。治療用リゾチームとしてアミノ-カルボニル反応を利用してグルコースと結合させた糖結合リゾチームを作製し、リゾチームと比較した。これらを10日間経口投与後にアナフィラキシーを誘導し、ショック症状を比較した。その結果、抗体応答については、治療後のリゾチーム特異的血中IgG、IgEに変化は認められなかったが、糞中のリゾチーム特異的IgAは治療後に増加傾向が認められ、糖結合リゾチーム群よりリゾチーム群の方が高値を示した。また、ショック誘導30分後の体温変化、アレルギー症状、小腸の炎症度についても解析を行った。その結果、糖結合リゾチーム群に比べてリゾチーム群ではショックによる体温低下が少なく、アレルギー症状は軽度で、小腸の炎症度も軽度になる傾向が見られた。これらの結果より、糖結合リゾチームよりリゾチームの方が治療効果が高いと考えられた。このような結果となった原因について調べるため、グラム陽性菌を選択的に溶菌するリゾチームの性質に着目し、糖結合リゾチームとリゾチームの溶菌活性を比較した。その結果、糖結合リゾチームはリゾチームと比較して溶菌活性が30%以下に低下しており、リゾチームに反応させたグルコースが溶菌活性部位に結合し、溶菌活性が低下していることが明らかとなった。以上の結果より、リゾチームを投与すると消化管内で溶菌活性を示し、腸内細菌の一部を溶菌して腸内細菌叢を変化させるため免疫応答が変化したのに対して、糖結合リゾチームを投与した場合では溶菌活性が低下していたため腸内細菌叢の変化は認められず、その結果治療効果が得られなかった可能性が考えられた。
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