炎症性腸疾患の患者や実験的大腸炎ラットにおいて、腸管ペプチド輸送担体(PEPT1)の発現異常が報告されており、炎症悪化や栄養障害に関与していることが推測される。 そこで本年度は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)投与による大腸炎誘発ラットを用い、ペプチド食が種々のパラメーター(血液指標、栄養状態、病態等)へ与える影響を検討した。Wistar系ラット(雄、6週齢)を一週間馴化飼育したのち、水道水(C)あるいは5%DSS水(D)を一週間自由飲水させ、この期間、20%大豆たん白質食(PR)あるいは20%大豆オリゴペプチド食(OP)を自由摂取させた。 DSS投与のD/PR群およびD/OP群において、摂餌量の減少に伴う体重停滞と減少がみられた。また、day2より下痢が出現し、さらにその後血便が認められるようになった。次に各種血液指標について検討した結果、C群に対してD群で変化する傾向がみられた主なものは、アルブミン値、・血糖値・中性脂肪・カルシウム・ナトリウム・カリウム(低下)、遊離脂肪酸・マグネシウム・炎症マーカーのC反応性たん白(増加)であった。 以上より、C/PR群およびD/PR群、C/OP群およびD/OP群においてDSS投与による栄養障害や病態変化は明らかであったが、これらに対するOP食の特異的影響は一部を除きみられなかった。体内のたん白質栄養状態、糖や脂質の代謝異常に摂餌量の減少が大きく関わったと考えられるが、既知の小腸PEPT1の発現低下もその一因であることが考えられる。今後その他の栄養素輸送担体の発現パターンと栄養状態および病態との関連性についても解析していく必要がある。
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