強力な摂食亢進ホルモンであるグレリンは、脂肪酸修飾という特徴的な構造を有している。グレリンの生理活性の発現にはこの修飾脂肪鎖が必須であり、かつN末端側の10アミノ酸残基が重要な役割を担っていることが示唆されている。その一方で、グレリンとグレリン受容体間の詳細な結合機序については未だ不明な点が多いため、昨年度に引き続き本年度においても、グレリンとグレリン受容体間の分子間ネットワークを包括的に推測するための評価系の構築に取り組んだ。 RT-PCR法にて合成したグレリン受容体(366アミノ酸残基)cDNAを鋳型として、PCR法にて増幅した4つの細胞外領域部位(Loop1;Met^1-Ala^<40>、Loop2;Trp^<104>-Tyr^<128>、Loop3;Glu^<188>-Ser^<207>、Loop4;Phe^<289>-Cys^<304>)を発現ベクターpET11aに挿入し、Loop1~4タンパク質をE.coli BL21(DE3)株内で過剰発現させた。研究計画立案時から膜タンパク質の安定発現系の構築の難易度の高さが予想されていたように、SDS-PAGEによる発現チェックの結果、極めて低い発現量であることが確認された。そこで、宿主大腸菌をE.coli SoluBL21株に変更して発現実験に取り組んだ結果、若干の改善が見出された。さらに、精製効率・収量を上げるためのN末端へのHis-tag導入と可溶性タンパク質の発現量の増大のための低温培養(150C)を可能にするコールドショック専用発現ベクターpColdIを用いて、新たな発現系を構築した。今後、Loop1~4の4つのグレリン受容体細胞外領域部位をHis-tag対応センサーチップに固定し、グレリンとの分子間相互作用を表面プラズモン共鳴法により解析する。
|