トランス脂肪酸(TFA)の過剰摂取は冠動脈疾患の誘因となることが明らかとなっているが、近年、欧米では妊娠期のTFA摂取により胎児の健康リスクを高めることが報告され注目されている。しかし、量的評価は十分でなく、また日本人のケースについては未だ解明されていない。そこで、本研究ではこれを解明し、妊娠期におけるTFA摂取のリスクを適正評価することを目的に解析を行った。大阪府立母子保健総合医療センターに入院した正常妊娠経過の母子16組を対象に、母体血、臍帯血、胎盤組織を採取し、それぞれに内部標準物質として^<13>C_7-オレイン酸を添加後脂質抽出を行いGC/MSに供した。得られたピーク面積からTFA(C18 : 1trans)とオレイン酸(C18 : 1cis)を定量した。得られた脂肪酸量を用いて胎児の発育指標との関連性を検討した。結果、臍帯血中にもTFAが検出され、母体血中から胎盤を介してTFAが胎児側へ移行することが明らかとなった。胎盤中TFA量と、児の発育指標との間には有意な負の相関が認められたが、シス型であるオレイン酸にはこのような相関性は見いだせなかった。このことからTFA摂取量が他国に比べて少ないとされる日本人妊婦においても胎児発育への影響が示唆された。しかし、脂肪酸は単独で摂取することはなく複合的に摂取するため他の脂肪酸の影響についても明らかにする必要がある。今後は総脂肪酸分析を行うと同時に、正常児だけでなく発育に異常のあった早産児にも対象を広げて検討を行いたい。
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