これまでに、胎盤組織中のトランス脂肪酸(以下TFA; Trans fatty acid)量のシス型脂肪酸に対する存在比t/c比が児の出生体重SDスコアと有意に負に相関することを報告した。最終年度は発達への影響を検討する予定であったが、データ数が十分に揃わなかったため以下の食事由来TFAに関する検証を行った。 TFAは体内で合成されないことから、胎盤組織中に存在するTFAはすべて母体が摂食した食品に由来する。そこで、母体のTFA摂取状況およびその他栄養素摂取量が胎児発育の良否に影響するのか検証した。研究に同意の得られた妊産褥婦84名に対し、簡易型自記式食事歴法質問票(以下BDHQ; Brief Dietary history Questionnaire)を用いた調査を行い、在胎週数に対し体重が少ない群(以下SGA; Small for gestational age)と、適正な群(以下AGA; Appropriate for gestational age)に分け、母体の栄養摂取状況を比較した。TFA量はBDHQの解析では得られないため、食品安全委員会の作成した「新開発食品評価書 食品に含まれるトランス脂肪酸」に掲載されている食品群別TFA含有量に基づき、積み上げ法により「推定TFA量」を算出し、2群間で比較した。BDHQを配布した84名のうち、回答が得られたのは36名(回収率43%)であった。正期産は2名しかいなかったため、早産児34名を解析の対象とした。在胎期間別出生時体重標準値からSGA群22名、AGA群12名となった。SGA群はAGA群よりも豆類とα-リノレン酸の摂取量が有意に少なかったが、推定TFA量は2群間に摂取量の差はなかった。母体の摂食したTFA摂取量と児発育に関連性は見出せなかったものの、豆類の摂取量およびα-リノレン酸の摂取量は関連する可能性が示唆された。
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