大豆中のタンパク質および脂質成分と、大豆そのものの脂質代謝改善機能を比較するため、ラットを用いた動物試験を実施した。実験1では、食餌中のタンパク質源(重量比20%)をカゼイン、分離大豆タンパク質、または大豆粉とし、実験2では脂質源(同10%)をパーム油、大豆油、または大豆粉とし、それぞれ食餌タンパク質源と脂質源の影響を検討した。血清中性脂肪濃度は、大豆タンパク質および大豆油食でいずれもカゼインおよびパーム油と比べて30%以上低下し、大豆粉摂取も低下傾向を示した。肝臓中性脂肪濃度は、大豆タンパク質および大豆油摂取による変化はなかったが、大豆粉摂取では低下傾向が見られた。肝臓の脂肪酸合成系酵素活性は、カゼインと比べて大豆タンパク質で有意に低下し、大豆粉も摂取量依存的にこれらの活性を低下させた。大豆油もパーム油と比べ脂肪酸合成系酵素系を抑制したが、大豆粉は摂取量にかかわらず抑制作用を示した。大豆のタンパク質と脂質成分は、いずれも肝臓の脂肪酸合成系の抑制作用により血清や肝臓の中性脂肪濃度を低下させると考えられるが、摂取量と作用の大きさとの関係には違いがあることが示唆された。血清総コレステロールおよびHDL-コレステロール濃度は、大豆タンパク質および大豆粉摂取によりカゼインと比べて有意に低下した。大豆油もパーム油と比べて血清総コレステロール濃度を低下させたが、HDL-コレステロールは低下せず、大豆粉摂取群でも同じ変化を示したことから、大豆のタンパク質成分と油脂成分で血清コレステロール濃度低下メカニズムに違いがあると考えられた。以上の結果から、これら両成分による脂質代謝改善作用への相互作用はほとんどなかったが、大豆粉摂取でも精製された大豆タンパク質、大豆油と同様の作用が示すことが明らかになった。
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