研究課題
高比重リポタンパク(HDL)は、末梢の余剰なコレステロールを肝臓に運搬するコレステロール逆転送系を担う抗動脈硬化性リポ蛋白であり、LDL低下療法が確立された現在、更なる心血管疾患リスクの軽減のターゲットとして注目を集めている。本研究では、HDLを介したコレステロール引抜き増強作用をもつポリフェノールを網羅的に探索した。その結果、コーヒーポリフェノールであるフェルラ酸の他、アスタキサンチンがマクロファージからのコレステロール引き抜き能を有することが明かとなった。アスタキサンチンは水産物に多く含まれており、抗酸化能を有することが知られている。実験の結果、アントシアニン、フェルラ酸およびアスタキサンチンはHDLによるコレステロール引き抜きを濃度依存性に促進し、マクロファージ膜に存在するコレステロール輸送蛋白のmRNAおよびタンパク発現を共に増大させた。よって、これらのポリフェノールは抗酸化能に加え、マクロファージからのコレステロール搬出を促進することにより、抗動脈硬化作用を発揮している可能性が示唆された。アスタキサンチンなどのポリフェノールは、食生活に密接に関係していることから、有病者だけでなく未病者の健康寿命の延長も期待できるという点で公衆衛生学的見地からも多大な貢献が期待できる。
1: 当初の計画以上に進展している
HDLを介した抗動脈硬化作用を有するポリフェノールの網羅的探索の結果、コーヒーポリフェノールであるフェルラ酸やアスタキサンチンが、マクロファージからのコレステロール引き抜き能を有することが明かとなった。アスタキサンチンのin vitroでの実験結果は本年中に論文掲載が決定している。
申請書の通り、ポリフェノールについてex vivo,in vivo実験で検討していく。また、in vitroおよびex vivo実験でコレステロール引き抜きを有すると報告されているアントシアニンについては、マウスを用いたin vivo実験を行う。更に、フェルラ酸については、マウスよりもヒトに近いHDLなどのリポ蛋白分画を有するハムスターを用いてin vivo実験を行う。
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