研究概要 |
現在の日本では糖尿病の発症率が高まっており、その予防に向けた対策が必要である。本研究では、糖尿病の主病態である高血糖が惹起する臓器への直接的な悪影響を考慮した新規な栄養指標開発を目指している。本研究期間では、高血糖と相関して細胞内にて増大することが示唆されているタンパク質の「O-GlcNAc化」に着目し、食餌による高血糖の改善がその生体内動態にどのように影響するかについて検討した。 今年度は、食餌により血糖値を慢性的にコントロールした動物モデルを確立した。具体的には、高血糖モデルマウス(ob/obマウス)を、通常飼料および特殊配合飼料(糖質制限飼料)にて飼育し、その血糖値を慢性的(1.5ヶ月間)に高血糖又は低血糖にコントロールした動物モデルを確立した。また、ELISA及びウエスタンブロッティングによる生体試料中のO-GlcNAcタンパク質の半定量的分析法を確立した。確立したモデル及び分析法を用いて、糖尿病と関わることが知られる肝臓、膵臓、腎臓、筋肉、脂肪組織について、各組織のタンパク質抽出液におけるO-GlcNAc化タンパク質を解析した。その結果、肝臓に発現している特定のO-GlcNAc化タンパク質が、慢性的な高血糖を反映して有意に増加することを見いだした。現在、見いだしたタンパク質の実体解明に向けた検討を引き続き進めている。 一方で、確立したモデルを用いて、ob/obマウスの主要な表現型である脂肪肝の形成が、食餌による持続的な高血糖の改善により抑制されることを見いだした。詳細な解析により、高血糖の改善に伴う脂肪酸生合成酵素(FAS, ACC1)の発現量の低下により肝臓での脂質生合成が抑制されることが、脂肪肝の改善に寄与していることを明らかにした。
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