本研究は、理工系産業人・技術者に対する即効性実験教育教材の開発及びその実施による教育効果の検証を目的とする。本年度は、各産業分野の要求される腐食に関する知識の調査・整理及びそれを理解するための教育内容・実験教材の開発を行った。以下に、成果を述べる。 (1)腐食防食技術に関する出前実験講座の実験内容・キットの開発及び試行 腐食防食技術の基礎から実際の事例を体得できる実験内容、キットの開発を行った。特に、講座を実施する場所として、各企業や工場の会議室・研修所等であり、専用の実験設備を持たない場合が多いため、使用する薬品や器具等安全かつ運搬のし易い物を設計・作製した。また実験内容は、理論や数式は極力少なくし実際に色の変化や測定機器の針の動きなどアナログ的な変化により、目で見て手で触って体得し効果的に理解できるものとした。さらに、各実験の時間配分、順番に関しても綿密に計画し、効果的なプログラムを作成した。出前講座の試行は、民間企業5箇所(約240名)に行った。ほぼ全ての受講者は、現場技術者であるが、腐食防食技術に関して初学者であった。 (2)教育効果の検証(アンケート、聞き取り調査) 受講者に関して、内容全体の理解度や講座全体の意見だけではなく、各実験の理解度やその有用性に関して、問題等の記述式アンケートを作成・実施した。また、一部の受講者に対して、受講半年後にインタビューを行い、学んだ内容が現場にどの程度フィードバックできたか否か、新たな問題点・課題などの聞き取り調査を行った。その結果、基礎内容の積み重ね及びその理解が、現場で生じる問題の早期解決に非常に重要であることが分かった。
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