研究概要 |
本研究では,情報教育における情報の科学的理解を目的としたシミュレーションとモデル化の授業を実現するための,新しいプログラミング言語実行環境「ますめ」の試作を行った.試作した「ますめ」は以下にあげる特徴を備えている.(1)表計算ソフトウェアに似たインターフェース(2)個々のセルを変数とみなし,その値に関するプログラミングを行うスタイル(3)エージェントベースのシミュレーションに適した自己参照や循環参照も可能(4)グラフィックなどによる表現も可能となっている. このような実行環境をオープンソースの形で公開し,ブラウザのみあれば利用することができるようにした.また,授業からのフィードバックに応えられるようにするため,プロプライエタリなソフトや技術はできる限り使わず,仮想マシンやそこで実行される中間言語およびコンパイラ・ランタイム環境などから実装を行った. 情報処理学会のコンピュータと教育研究会や全国大会にて,試作した「ますめ」を発表し,問題点についてその都度,議論を重ねた上で改良を行った.特に,循環参照時のセルの実行順やその制御のインターフェースについては,高等学校で利用することを前提として,分かりやすい動作になるように設計の見直しを行った.この見直しの1つとして,編集モードおよび実行ターンという考えを導入し,直感的に利用できるようになった.さらに,高等学校情報科の教諭と議論を行い,風邪感染シミュレーションなどのサンプル教材の検討とサンプルプログラミングを行った.その結果,「ますめ」によるシミュレーションとモデル化の授業が実現可能になった.ただし,新しい環境による授業であるため,教師の方に「ますめ」への理解が必要であり,これを支援するためにはより実践的な活動とその分析が必要であることが分かった.
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