研究概要 |
本年度は,技術科の実習場面における指導・評価の実態を解明するために,ビデオカメラなどで授業の状況・文脈を記録するとともに,授業者-学習者間の発話をICレコーダで録音することを試みた。データの収集は,木材を材料としたものづくりの授業と,ロボットの設計・製作の授業を対象として行った。木材を材料としたものづくりの授業において,暫定的な発話の分類カテゴリーを設定し,発話の出現頻度を検討した。その結果,材料の切断の工程では,「基本使用の指示」や「基本使用の確認・評価」などのカテゴリーに分類される発話が多く出現しており,工具の使用方法の指示や確認・評価を軸として実習場面の学習指導を行っていることが推察できた。また,仕上げ・塗装の工程では,「製作活動の指示」や「製作活動の質問」などのカテゴリーの属する発話が多く示された。このことから,仕上げ・塗装の工程では,製作活動の内容を確認・指示することが学習指導の主な内容になっていることが示唆された。さらに,木材を材料としたものづくりの授業全体では,指示的な発話が多く行われており,学習者の思考や判断を促進させるような,指摘的な発話が少ない傾向が示された。従って,実習場面における指導・評価においては,指示的にならないように留意して,学習者の気づきや発見を促進する学習指導を行う必要性が指摘できた。現在は,発話カテゴリーの精選・検討を行うとともに,ロボットの設計・製作の授業について発話の分析を進めている。
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