本研究は、1)吉本哲郎が提唱する地元学(水俣地元学)の思想と手法を軸にして、地域に深く学び、暮らしづくりに役立てていく実践の特性に理論的位置づけを与え、2)学習者が暮らすその「土地固有の自然条件」と「社会経済史」を統一的に認識し、地域の個性(土地固有の自然社会史)を把握する調査方法の開発を目的にしている。また、3)その過程で獲得する認識が、現実の地域づくりの中で活用される条件を明らかにしていくことを意図している。初年度にあたる本年は、(1)進化し続ける吉本の地元学実践の参与観察と吉本研究を実施する傍ら、(2)地域に深く学び、暮らしづくりに役立てていく実践を教育活動として意識的に取り組む沖縄県国頭村の地域調査(教育プログラム調査)、(3)土地固有の自然社会史認識のあり様を古老の聞き取りによって探った徳之島調査、(4)地区振興計画の策定という方法で、集落づくりに取り組む鹿児島県垂水市の地域調査の4つのアプローチから研究課題に取り組んだ。本年度は、地域の個性を把握する調査方法の事例研究に注力し、その土地に暮らす住民が、地域資源に気づき、活用していく実践の特性を把握することに努め、理論化に向けた基礎データーを収集することができた。また、一連の事例研究は、本研究プロセスの特徴である、現場の声を反映するために次年度以降に予定している研究ワーキングの参加メンバーの選定につながるネットワークづくりにも成果を得ることができた。
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