研究概要 |
平成22年度は,先行研究のレビューにより,教育実践の中での学習評価の位置づけに関する研究動向を把握した上で,自作テストの作問・評価過程についての教師へのインタビュー調査を実施した。 1.教師へのインタビュー調査 インタビュー対象は,定期テストなどを自作した経験を持つ中学校教師で,担当教科は作問過程が似通っていないと想定される国語,数学,理科の3教科とした。これまでに研究協力の関係が構築されてきた岡山県2校及び秋田県1校の中学校を調査対象校とし,各校で3教科の教員に対してインタビューを実施した。インタビューは,実際に作成したテスト問題に基づきながら,問題作成の手順,問題作成時の方針やルール,子どもの答案から見取る能力の内容やその到達度,定期テストとその他のテストや日常の授業,学習指導要領,教科書等との関連性等の観点で行った。またインタビュー調査と並行して,テスト実施後(採点答案返却時)の授業観察を行った。テスト実施後の授業において,教師が試験答案の返却のほかにどのような活動を行っているか,また子どもに対してどのような情報を伝えようとしているかについて観察した。 2.学習評価及び教師の実践的知識に関する研究動向の把握 インタビュー調査の基盤として,先行研究のレビューや情報収集を行い,ショーマンのPCKの概念の中での「翻案」及び浅田の教室情報に関する研究が援用できることがわかった。 上記の分析を通じて,(1)日常の授業とテストの関わりの中で学習評価に関するフィードバック及びフィードフォワード情報がある,(2)子どもにとっての難易度を意識している,(3)指導要録及び通知表における評価観点を強く意識している,(4)テストを通じて学習や教育評価に関する価値観の伝達を意図している,等が明らかになった。研究成果は,日本教育工学会第26回全国大会(金城学院大学)において報告した。
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