本年度は,研究課題の最終年度にあたり,前年度から継続している岡山県及び秋田県の中学校教師を対象とした聞き取り調査,及び成果報告,研究の総括に取り組んだ。 秋田県A市においては,市教育委員会の協力のもと,市内全中学校を対象とする質問紙調査及び資料収集を実施した。質問紙調査の内容は,定期テストの問題構成や設問の意図や趣旨に関するものや,テストを作成する際に参照しているものや教員間のコミュニケーションなどの実状について問うものである。この質問紙調査に合わせて,定期テストにおける具体的工夫などについてもたずねた。加えて,同市のB中学校では,定期テストを作成した国語,社会,数学,理科,英語の教師15名にインタビューすることができた。実際のテスト作成のプロセスについて詳しく聞き取ることができ,同時に,教科単位の取組や学校全体でのテストへの対応についても情報を得ることができた。 研究成果の報告として,日本教育工学会第28回全国大会(9月,長崎大学)及び日本教育方法学会第48回大会(10月,福井大学)において口頭発表を行い,参加会員と議論を深めた。その結果,教師の担当学年や教科,テスト実施時期(学期)の要因の影響が大きいことはもちろんのこと,経験年数による違いや高校入試の強い影響も明らかになってきた。 今後の課題として,研究計画の当初想定していた「学力構造」のモデル化には十分な分析ができなかった点が挙げられる。自作テストに表れる教師の学力観は,当然のことながら学習指導要領や教科書に基づいたものであり,その上に,高校入試への対応が大きな影響を及ぼしている。その中で個々の教師が重要視している学力-これだけは身に付けてもらいたい力-を抽出する研究が必要である。
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