本研究では、管理職のリーダーシップによって構築された教員の社会関係資本が、学校の教育改善に対してどのような影響を及ぼすかを、組織調査を通じて実証的に明らかにすることを目的とする。 近年の先行研究においては、学校の教育の質の改善を実現する上で、校長のリーダーシップは極めて重要な要因として位置づけられており、それらが教員間の同僚性・社会関係を構築する資源として機能することがわかっている。また、別の先行研究においては、教員の有する社会関係が、教授の質や学業成績に対して間接的な影響を及ぼすことが報告されている。しかし、従来の先行研究においては、これらの諸関係を分析した実証的研究はほとんど蓄積されていない。 本研究では、具体的には、某市において学校長(校長・副校長)のイニシアチブによって構築された教員間のメンタリング・協働の程度に着目し、その効果を、定性的かつ質問紙分析を用いて定量的に明らかにすることを試みた。定量調査を行う前には、様々なヒアリング・学校訪問を行い、定量的にそれらを把握するためのフレームワークを構築した。 調査は、某市教育委員会の協力を得て、600名の回答者による質問紙調査として行われた。分析はいまだ途上であるが、分散分析・重回帰分析等を用いて、教育力の向上に資する要因を探索的に明らかにすることを試みた。 その結果、学校内の教育改善、とりわけ若手教員の授業力向上に資するような有効なメンタリングの方法が見出された。若手教員の抱える課題にそって、彼らにイニシアチブをもたせるようなメンタリング、社会関係の構築が求められる。
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