研究概要 |
本研究の目的は,既存システムの個別性・協働性・継続性に関する問題を解決する,「個別の教育支援計画」作成・共有Webシステムの開発である. 既存システムでは,教育機関が画一的なテンプレートを定めている.システムは画一的な記述項目のみを扱うことにより,「個別の教育支援計画」(以下,「計画」)作成の継続性,協働性を高めている.これは,その教育機関における,要求仕様レベルでのテンプレートを用いた"形式化"のひとつと言える.しかし,画一的なテンプレートを定めているために,多様なニーズを有する児童一人ひとりに対する個別性の高い「計画」を記述することは困難である.また,特別支援教育は始まったばかりであり,支援の継続において従来想定されていなかった,新規な支援内容の項目が追加・変更されることが予期される.よって,「計画」には,現状には無い項目の追加・変更に関しても対応できる高い個別性が必要となる.既存のシステムでは,このレベルでの"個別化"は達成できているとは言えない。 本研究では,既存システムの問題を「計画」の記述における個別化と形式化のトレードオフと定め,これを解決することを目的に開発した.システムの特徴は以下のとおりである.1)システムは児童一人ひとりの記述文法を保持する.記述文法は,「計画」の枠組みの範囲内で再定義ができ,教師の意図する記述項目の変更が可能である.これにより個別化を支援する.2)記述項目は記述データとしてデータベースで正規化されている.さらに,記述文法は記述項目間の正規化を支援し,記述内容間の整合性を高める.これにより形式化を支援する.3)「計画」は記述文法に則った木構造として扱われ,適宜記述される支援プロセスの関係を明確化する.これにより,教師らの知識共有を支援する. また,開発したシステムは,実践的運用において評価され,その有効性を確認することができた.
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