本研究の目的は,教育実習生が作成するティーチング・ポートフォリオの記述を質的研究方法によって分析することを通して,省察が深化する過程を中心に教師として成長する様相を明らかにすることである.最終年度である平成24年度は,次の研究を実施した. 1.国内外の教員養成における教員スタンダードに関する情報の収集を継続した.そして,収集した資料のうち,米国NCATEが提唱した「臨床ベースの教員養成プログラムのための10のデザイン原則」に照らして,信州大学教育学部における1年次生対象の臨床経験科目「教育臨床基礎」の有効性と改善点を検討した.その結果,「教育臨床基礎」では10原則の多くが実現されていることが分かった一方で,実施には至っていない原則もあり,今後の改善への示唆が得られた. 2.信州大学教育学部における学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー),中教審答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」における「教員として求められる4つの事項」,INTASCスタンダード等を参考しながら提案した自己評価の7観点を,教職ポートフォリオにおけるに対応できるように12観点に改訂した.そしてその12観点から自己評価を行う教職eポートフォリオの本格運用を開始した.1年次生「教育臨床入門」と3年次生「教育実習事前・事後指導」の課題に位置付けて,自己評価,学生間の相互評価,学部教員からの指導者評価を実施した.その結果,教職eポートフォリオに蓄積された自己評価や相互評価を通して省察が深化することがわかった. 3.本研究課題に関連して,次の研究発表を行った.「教員養成カリキュラムにおける体験的活動の検討-NCATE Blue Ribbon Panelのデザイン原則を手がかりに-」日本教育工学会研究会,「教員養成と教員研修における教職ポートフォリオの活用-学び続ける教師の養成のために-」日本教育工学会第28回大会.
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