人間が力んでいるときに表れる顔は、表情の変化だけでなく、顔色の変化も表れていると、興奮、疲労、身の危険の存在などの情感の強度を認知する度合いも異なる。従って、顔色は、情感の強度を伝達するコミュニケーション機能として、一役を担っているものと推察される。本研究課題は、乳児と成人における力みに伴う顔色に着目し、顔色による身体性の役割を明らかにすることを目的に実施した。さらに、顔色から情動を推定できる情感表示インタフェースへの応用を試みた。具体的には、まず顔画像、顔面皮膚温、表情筋筋電図、呼吸の同時計測に基づく顔色の情動評価手法を提案している。次に、顔色の情動評価手法を用いて、乳児を対象にした泣き顔における力みに伴う表情・顔色と、成人を対象にした力覚提示に伴い強制的に循環動態を変動させたときの表情・顔色の解析実験を行った。乳児と成人において、力みに伴う表情・顔色を比較検証した結果、力みに伴い顔面皮膚温が上昇し、顔色の色相が下降する現象は、大頬骨筋と皺眉筋の活動で鼻部が圧迫され、呼吸を一時的に止めることで生じる無酸素運動状態によるものである事例を得た。さらに、動的顔色と表情による情動提示の合成的解析のための平均顔色画像アバタシステムのプロトタイプを開発した。平均顔色画像アバタシステムは、乳児の月齢ごとの平均顔色画像をシステムに導入し、動的顔色を表情とともに合成することで、乳児の情動発達を理解するためのシステムへの応用が考えられる。
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