本研究の目的は、eラーニングなどの電子メディア学習環境におけるコミュニケーションの中で、学習者の感情状態とメッセージ送信のタイミングの関係を探ることである。 前年度に行った調査により、調査対象者の大学生は、携帯メールコミュニケーション(現代の大学生のメインのコミュニケーションツール)において、やりとりの相手にメーニルを送るタイミングを意図的に操作(具体的には、相手に返信メールを送れる状況においても、返信を意図的に遅らせる)していることがわかった。意図的な操作を行う理由として、例えば、「すぐに送信してしまうと、私の怒りが相手に伝わってしまうから」や「相手の怒りがさめるころを見計らって・・・」など送信者自身あるいはその受信者の感情面に言及したものが多くあげられた。すなわち、送信のタイミングを操作することで、不快感情を抑え、より快適なコミュニケーションに移行することを狙っていることがわかった。 そこで、平成23年度は、受信者の側に注目し、送信者が意図的にタイミングを操作して返信を遅らせる行為がどう影響を及ぼすかについて検討した。主な結果は以下である。 受信者は感情状態を問わず(本検討では、次の4種類の感情状態を調べた:喜び、悲しみ、怒り、罪悪)、意図的に送信のタイミングを操作し、送信を遅らせることを快く思っていない。特にネガティブ感情を生じているときに送信者が気を使って送信を遅らせていることが受信者にわかったとしても、受信者は迅速な受信を求めていることがわかった。すなわち、本研究から、意図的なタイミング操作について、送信者と受信者で捉え方にギャップのあることが示された。
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