本研究の目的は、異なる組織が管理する複数の教材管理サーバ上に存在するeラーニング教材を横断的に利用する.ための一連のシステムを開発することである。開発するシステムでは、標準規格であるSCORMに準拠した教材を対象とし、複数の教材管理サーバ上に分散して存在する教材の利用、教材管理サーバ上に集約された教材群からの教材の選択、組織ごとの利用可能教材の管理という機能を同時に実現することを目指している。本年度は、システムの実現に向けた某礎的取り組みとして次の2点を実施した。(1)本システムを実現する際の基礎となる、複数の教材配信サーバ上に存在する教材を利用した学習を実現する手法の検討と試作システムの開発を行った。 具体的には、SCORM教材を管理するマニフェストファイルに対して学習用eラーニング教材のアドレスを記録しておき、学習時にLMSがマニフェストファイルの記載に従って教材配信サーバ上の教材を取得するようにSCORMを拡張したシステムを設計した。オープンソースのLMSであるMoodleを拡張した試作システムを開発して動作確認を行った結果、実際に複数のサーバ上に存在する教材を利用した学習が実現可能であることが確認できた。(2)多数の教材を集約して配信する際に、利用教材を選択する機能を実現する際の課題を明らかにするため、既存の教材配信事例について調査を行った。具体的な教材配信事例として、全国の大学等へSCORM形式の汎用的なeラーニング教材を配信することを目的としたUPO-NETプロジェクトを対象とし、教材選択機能に必要とされる課題を検証した結果、制作者が設定したコースの範囲を越えて教材を組み合わせて利用する機能への必要性が示唆された。今後は、今年度の結果を踏まえて本システムでの教材選択機能の実現を図っていくことを予定している。
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