研究概要 |
平成23年度は、申請者による先行研究をもとに、行為経験を応用した英語教育手法を試作し、さらにその効果を実際の英語運用場面、特にリーディングにおいて応用可能な教育手法を開発し、この教育手法の効果を検証することを目的として実験を行った。具体的には、英語習得語彙を見た瞬間認識できる「視認語」が活用語彙であると定義し、リーディングにおける活用語彙として定着させるべくCD-ROM教材を開発した。開発したCD-R0Mを用いて語彙を習得する群(実験群:視認語習得群)と、同じ語彙をCD-ROMを用いないで自らのペースで記憶する群(統制群:自己ペース学習群)の2群に分けた。独立変数は単語の記憶方法の違いである。両群の英語能力の均質性を確かめるためにTOEICブリッジテストのリーディングセクションを用いて23名を視認語習得群と自己ペース学習群の2群に分けた。刺激文としてはHaenggi, D., Kintsch, W., & Gernsbacher, M.A.(1995). Spatial situation models and text comprehension. Discourse Processes, 19,173-199.で使用された刺激文の1部を使用した。Haenggiらの研究では、記憶した部屋の構造を頼りに、物語に出てくる人物の動きをどのように読み手は読解しているかを調べたものである。従属変数として文章理解課題を2種類用意した。1つの課題は直後再認課題である。この課題は文章そのものの理解、つまりテキストベースの理解を測るものと位置付けられる。もうl種類の課題は文章をある箇所まで読んだ段階で「いま主人公と一緒にある事物」の正誤を読み手に答えさせるものである。この課題は文章そのものの理解ではなく、文章が描く空間的な状況をどれだけ理解しているか、つまり状況モデルの理解を測るものと位置付けられる。単語の記憶方法の違いによって、テキストベースと状況モデル、両レベルにおける文章理解の程度の差を検証した。
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