当初の予定通り、平成24年度は、平成22年度に開発した2種類のハイパートレール、つまり線形ハイパートレールと非線形ハイパートレールを実装したハイパーメディア教材「太陽系の8惑星」を使った実証実験を行った。ここでは、ハイパートレールが、どのような知識構造を持つ学習者をいかに援助しうるかという問題を扱った。すなわち、学習者の既有の知識の多寡によって、ある特定化されたハイパートレールが効果的に働くことを検証する。これにより、学習者の知識構造の相違によって、与えるべきハイパートレールが規定されることを検証した。 結果、先有知識の少ない学習者は、一次元構造の線形ハイパートレールを用いることで、知識にまとまりをもたせられることが示された。しかし、情報を留める係留地の少ない学習者は、多次元構造の非線形ハイパートレールを与えられると、知識を上手くまとめることができずに、認知エントロピーが増大する可能性が示唆された。一方で、先有知識の多い学習者は、非線形ハイパートレールを用いることで、知識にまとまりを持たせつつ知識を拡げられることが示唆された。 平成24年度に行われた実験の手続きは、①実験実施の依頼:2ヶ月(平成24年4~5月)、②実験の実施:3ヶ月(6~8月)、データの入力:1ヶ月(9月)、データの分析:2ヶ月(10~11月)、研究成果報告のための原稿執筆および学会発表:4ヶ月(12月~平成25年3月)という手順で行われた。実験は、研究代表者と補助員4名の計5名でチームを組んで行われた。
|