研究概要 |
本研究は領域を越えた知の基盤となる議論力に注目し,大学生の議論力の育成を目的とする。この目的を達成するために,本研究は〔1〕大学生の議論熟達化総合モデルを開発するとともに,〔2〕実践コミュニティ創生型議論評価システムを構築することを目的とした。 本年度の「議論実践熟達化総合モデルの開発と信頼性の検討」の概要を二点に分け以下に示す。 目的:(1)大学生の議論内容,議論表現,認識の熟達化一般モデルの開発と,熟達化特殊パターンにおける個人差の要因の検討。(2)議論実践熟達化総合モデルに基づいた,議論の指標を含む評価システムの開発。 方法:(1)研究(1)の書き起こしデータ,音声データを統計解析し,典型パターンと非典型パターンを特定する。その際,(1)内容(思考的側面),(2)表現(言語的側面),(3)認識(態度的側面)の三つのレイヤーに分けてモデル化する。複数の第三者によって暫定的に作成した各モデルをデータの一致度を検討することで,それぞれの妥当性・信頼性を検討する。各モデル化が終わった後に,統合モデルの熟達化についても明らかにする。(2)結果を基に,学習到達度別の評価指標を作成する。評価指標の作成のために協力者に対してインタビュー調査をおこない,自己評価と他者評価のフィードバックを交えて指標の精度を高める。音声言語訓練装置を用いて,議論的弁論に必要な音声言語スキルを向上させるための理論的枠組みを構築する。 成果:予定通りにデータ収集を完了させ,詳細な分析作業に入った。途中段階で得られた知見を学会等で発表し,関連分野の研究者と分析の方向性についてインタビューを行うとともに,モデル・評価システム開発に必要な研究資料収集を行った。最終年度のまとめに向けて,研究の総括をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画のとおりにおおむね順調に進んでいるが,23度は(1)内容(思考的側面),(3)認識(態度的側面)に関する調査・解析に当初の予定より時間が多く費やされた。そのため,24年度は(2)表現(言語的側面)に関して残っている研究を重点的・優先的に実施し,研究全体の総括をおこなう。
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