本研究の目的は大学の抱える課題「学習成果のエビデンスが提示できない」について、解決のための一つの手法の提案を目指す。そして各大学の教員・学生が学習成果を常に意識し、社会に学習成果の最新エビデンス情報をリアルタイムに発信できる環境を提供することが本研究の目的である。 本研究では主に2つの成果をあげた。平成22年度から学習成果の可視化を行うため、シラバスに学習成果情報を掲載する仕組み「学習成果可視型シラバス作成支援システム」の構築を行い、学習成果を可視化する手法の一つの開発を行ってきたが、本システムを作成するプロセスにおいて、学習成果の概念が高等教育機関で共有されていないことが可視化の環境整備を妨げていることが明らかとなってきた。共有されない原因を特定するため、学習成果の概念への認識について学部長を対象にヒアリング調査を行い、分析を行った。その結果、学習成果の明確性は高等教育機関の卒業生に期待される人材像の明確性によって規定されることが示された。また、汎用的なスキルとされるジェネリックスキルの育成について多くの高等教育機関が苦慮し、その原因として、ジェネリックスキルがあらゆる学部を横断するスキルとして認識されず、従来型の専門教育の枠組みの中での専門基礎スキルとして認識されているケースも多く見受けられ、育成方法にも混乱が生じていることがわかった。このことから、高等教育機関の学習成果情報を検索できる環境を整備することで、他の高等教育機関における学習成果への取り組みや、先進的な事例を参考に、学内における議論が促進され、その結果、ジェネリックスキルなどの従来の専門教育において育成される学習成果とは異なるスキルに対する概念の精緻化がなされると考えた。このことから、学習成果情報を検索できるエンジンを開発・精緻化を行いテスト運用を行った。
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