本研究は、文化財の透過X線撮影に単色X線を用いることによって、撮影条件の体系化を目指すものである。透過撮影は文化財の研究に重要な調査方法の一つになっており、様々な研究機関で用いられているが撮影条件は体系化なされていない。今後このような状況が続くと撮影した画像を比較したり、画像情報から科学的な知見を求めることが困難になってしまう。そこで、照射X線にこれまでの連続X線に代わり単色X線を用いると、異なるX線照射装置を使用しても同じ照射スペクトルによっての撮影が可能になるため、撮影条件が体系化できることに加えこれまで透過率の差が小さく不明瞭だった部分の透過画像が明瞭になり、透過濃度の再現性も向上する。 平成22年度は、単色X線スペクトルの発生に用いる金属フィルタのシミュレーションによる設計・製作を行う予定であったが、研究代表者の異動により研究環境が変化したため、22年度の交付金の大半を翌年に繰越とした。よって、22年度は研究によって顕著な成果が得られなかった。
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