研究課題/領域番号 |
22700847
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
瀧川 渉 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (90323005)
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キーワード | 縄文・弥生時代人骨 / 筋骨格ストレスマーカー / 筋・腱付着部 / 四肢骨形態 / 変形性関節炎 / 生業活動 / 形態人類学 / 骨考古学 |
研究概要 |
本研究課題を実施するに際して課題となっていたことは、MSM項目の加齢変化が集団間のMSMの地域的多様性の評価に及ぼし得る影響であった。集団によって平均寿命が異なれば、平均寿命が高い集団ほどMSMの進行度も高く提示される可能性があり、有意な集団間比較ができなくなりかねないためである。このような加齢変化の状況を確認しておく必要性から、死亡年齢記録が明らかな畿内現代人資料について、成人の年齢階層(20-30歳代と40-50歳代)間で各項目の平均スコアにどれほどの有意差が認められるかを検討した。並行して、今まで収集した縄文人データのうち、国内最多出土個体数を誇る愛知県田原市の吉胡貝塚出土資料に注目し、畿内現代人資料や北部九州弥生人資料における加齢変化との比較も試みた。その結果、吉胡縄文人では男女とも有意な年齢差が示された項目はわずかに過ぎないことが判明し、縄文人の場合は20-50歳代までの個体であれば、ある程度はプールして処理することが可能であると判断された。 そこで、平成23年度までに北海道の噴火湾沿岸および礼文島、岩手県の蝦島貝塚、千葉県の姥山貝塚、愛知県の吉胡貝塚、岡山県の津雲貝塚出土人骨のデータが蓄積されてきたため、これら5集団におけるMSMの各項目の平均スコアを比較し、これを基に各種統計解析を実施し、その地域差を確認した。その結果、まず北海道集団は男女とも平均スコアが5集団内で最も高くなる項目が多く、一元配置の分散分析を実施すると、男性では上肢骨のほとんどの項目で有意な地域差が認められることが判明した。さらに男性と女性でこれら5地域における集団間分散の大きさの違いを確認したところ、15項目中10項目で男性の方が集大きくなることが示された。また、畿内現代人を基準とした偏差折線を比較すると、男性ではパターンにかなり地域的なバラつきがあるが、女性ではいずれの集団も類似するパターンを示した。すなわち、縄文人におけるMSMは、男性の方が女性よりも明らかに大きな地域的多様性を持っていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日々の精進の賜物である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は本申請研究の最終年度であるので、現代人資料や九州地方出土縄文人資料について、不足するデータの補完作業を実施する。同時に、縄文人と類似する生業様式を持つとされる北海道の続縄文人や、その併行期に該当する西日本の弥生人集団についてもデータを収集・整理の上、これまでに収集した縄文人の各地域集団との比較検討に取り組む予定である。現在のところ、差し迫って大きな問題点はなく、このまま研究活動を継続する所存である。
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