本研究課題の最終年度にあたる平成24年度は、農産物のブランド化を積極的に推進している事例について、成功例・失敗例の両面から事例調査を数多く実施した。4月および5月には、日本有数の高品質果実産地として知られる長野県須高地域において調査を実施し、その独自の流通政策が主要卸売市場における販路や単価の確保に重要な役割を果たしていることを明らかにした。5月には、北海道において研究者らと研究情報の交換を行うとともに、8~9月に実施したニセコ地域における農産物や農村空間のブランド形成戦略に関する調査に向けた打ち合わせを行った。10月には、長崎県佐世保市とその周辺地域を訪ね、ローカルな消費と結びついた農産物流通と、それに関連した商店街の活性化策について調査を実施した。また、平成25年2月にも、沖縄県を代表するB級グルメ「タコライス」発祥の地として知られる金武町を訪ね、ローカルなフードネットワークとブランド・エクイティの構築がもたらす効果や、社交飲食業地域に与えた影響等について調査を実施した。 現地調査にあたっては、関係する行政機関、農協や商工業団体、当該農産物を生産する農漁業者、加工食品の製造業者など、ブランド形成にかかわる多様な主体に対して、広く聞き取り調査を実施した。また、地元紙やローカル雑誌における報道・紹介の内容や、各種計画書・報告書等の収集にも努めた。卸売業者をはじめとする流通業者に対する調査も重視した。品種選定や出荷時期の調整、栽培方式の指定等において、流通業者が農家を指導する機会は年々増加しているためである。 以上のように、本研究課題の最終年度にあたる平成24年度は、具体的な事例調査の積み重ねを図った。また、こうした地道な調査を通じて蓄積した情報を分類・評価することによって、農水産物に関わるブランド・エクイティ戦略の体系的把握と理論化に努めている。
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