本研究では,地下水が流動する際に発する微弱な音波を地表面から集音し,簡便かつ迅速に地下水の水みち位置を特定することで,「遊牧民が日常的に利用する浅井戸をどこに掘れば生活に十分な水量が得られるか」という問題を解決することを目的としている。 平成24年度の夏期調査で行った浅井戸調査では,平成22年度夏期調査で測定を行った全ての浅井戸に加えて39点の新規井戸の調査を行った。 調査地点の地質によって地下流水音のデータがばらつくことが前回までの結果で明らかになったが,全データ(地下水位は0.2-9.4 m,音圧は220.0-28.3(無次元))を用いた地下水位の推定精度は決定係数が0.56であった。同一地質かつ弱風条件で行った日本における調査の場合は決定係数が0.89と非常に高くなるが,遮るものの少ない乾燥地では恒に風が強いため,また今回の調査では複数の地質条件が重なっていることもあわせて,精度が落ちたものと考えられる。ただし,今回作成した回帰式を用いることで,2-3m程度の誤差で現地の地下水位を推定することが可能になった。 冬期調査では,地下水の流れの速い花崗岩地帯において,凍土条件での地下流水音探査をおこなった。100m×100mの範囲で測定を行った結果,気温-30℃かつ凍土条件においても夏期と同等かそれ以上の精度で地下水位を推定できることが明らかになった。
|