本研究は、中央構造線活断層帯周辺を対象として変動地形学的な研究を行い、変位速度と活断層の地下構造の地域的な違いに基づいて、島弧中央の横ずれ断層の新期断層運動の運動特性を明らかにしようとするものである。具体的には、紀伊半島から四国にかけての横ずれ断層周辺の段丘地形を再検討し、第四紀学の最新の知見に基づいた合理的な地形発達に編み直すことを通して、数万年スケールでの平均変位速度の分布を検討するとともに、断層周辺の段丘面の変形様式に基づいた地下の断層面の傾斜角を検討した。 今年度は、昨年度作成した中央構造線活断層帯の地理情報データベースをもとに,複数の変位基準に横ずれ変位が認められる場所を数地点,探しだした。空中写真測量や現地調査により変位地形の測量を行い,変位ベクトルを中央構造線で初めて明らかにした。また,地形面の形成年代を放射性炭素法により数地点で明らかにし,これらにより高精度な変位速度が算定された。 断層を挟んで分布する地形面の分布高度を詳しく検討したところ,阿讃山地南麓では断層崖から北へ数km以内の範囲で北への緩やかな傾動が認められた。変位ベクトルに基づいて断層近傍の変形についてディスロケーションモデルでシミュレーションをしたところ,断層面の傾斜角は低角度よりも高角度の方が段丘面の高度分布をよりよく説明できる可能性があることがわかった。
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