研究概要 |
火山体で頻発する巨大山体崩壊を対象とした本研究課題に関して、今年度の主要な成果は以下に述べるとおりである。まず、日本における複数の事例について、山体崩壊によって形成された堆積地形である「流れ山」の縦断分布特性を検討し、その地形学的な意義を吟味した論文を発表した(Yoshida et al.,2012,Geomorphology)。これは、空中写真などの地形判読とGISによる地形計測とを併用して明らかにした流れ山の縦断分布の特徴が、巨大山体崩壊の規模(崩壊量)や岩屑なだれの流動性(等価摩擦係数)の大小を反映していることを示したものである。また、この成果に基づき、磐梯火山における1888年の山体崩壊についての検討も行った。この事例においては山体崩壊量に関して複数の異なる見解が示されており、従来は約1.2km^3という値が多く引用されてきたが、流れ山の分布の特徴を把握した結果、崩壊の量的規模は約0.6km^3と推算された(吉田、2012、地形)。すなわち、磐梯火山の山体崩壊は0.5km^3規模の崩壊であったとする前年度の成果と調和する結果が得られた。山体崩壊の実態解明において流れ山地形が有用であること、さらに多くの事例に対して適用しうることが示唆された。また、日本国内では鳥海火山、羊蹄火山に加え、磐梯火山における古い山体崩壊による流れ山地形の地形判読を行った。国外ではフィリピンのイリガ火山、ニュージーランドのエグモント火山の山体崩壊に関する資料収集調査を現地に赴いて実施した。次年度にはこれらの事例に関するデータのとりまとめと学会発表および論文発表を行う。
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