本年度は安全安心に関する文献と同時に、数理・計量地理学や社会調査に関する方法論、計量経済学の計測モデルに関する文献の収集および整理を行いながら、主として分析モデルの選定と仮説立て、分析データの整理・基本集計を行った。とりわけ、本研究では町丁目・字レベルでの地域的な社会関係が、身近な地域の環境財の保全に対する支払意思額(WTP)や労働意思量(WTW)を規定するとする仮説のもと、仮想評価法(CVM)の調査設計を行っている。こうした地域的な社会関係は身近な地域における信頼関係や社会的ネットワークにあらわされるような社会関係資本に関する議論とも符合するため、当該研究領域の研究者との意見交換や関連文献の収集を行いながら、本研究における支払意思額・労働意思量を規定する個人的・地域的な要因をそれぞれ整理した。なお、本研究と関連する研究発表として、本報告書の発表文献に記載されている「社会調査環境の移行期における新たな調査法とその課題」(経済地理学会関西支部12月例会、単独報告)や「潜在的な観光客の仮想行動に着目した歴史的景観の保全による観光需要の地理的変動―京都市における事例分析―」(経済地理学年報58巻4号、共著)をはじめ、環境経済評価や数理・計量地理学、社会調査法、安全安心に関する論文・学会報告を行った。これらの研究成果も活かしながら、本研究課題の研究成果を、次年度以降、順次公表していきたい。
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