研究課題
microRNA(miRNA)の中にはtumor suppressorとして機能するものがあり、それらは発がんやがんの進展に伴って発現が低下することが報告されている。申請者はこれまでに独自の二次構造を持つDecoy RNA(TuD RNAと名付けた)を細胞内で発現させ、標的とするmiRNAを特異的に高効率、長期間阻害する手法を開発してきた。本研究では、この手法の改良を進めるとともに、本手法を用いてがん細胞の増殖能や転移能といった性質に深く関わるmiRNAを同定し、その機能を解明することを目的とする。TuD RNAの改良を目指し、その二次構造や配列、発現に用いるプロモーターについて検討した。従来法ではmU6プロモーターを用いるが、h7SKプロモーターを用いることにより、標的miRNAの阻害効果が大きく上昇することを見出した。次に改良した阻害法を用いてがん細胞の増悪化を誘導できるかどうかを検討した。がん細胞のEMTを抑制するmiRNAとして報告されているmiR-200familyに対するTuD RNAを発現するレンチウイルスベクターを大腸がん上皮細胞であるHCT-116細胞に導入し、TuD-miR200安定発現細胞を作製した。この細胞の上皮、間葉細胞のマーカー遺伝子であるE-cadherin、Vimentinのタンパク質量を測定したところ、レンチウイルスベクター導入から7日目にはE-cadherinの減少が見られ、11日目にはE-cadherinの大幅な減少、Vimentinの発現増強が観察された。さらにこの細胞の形態は、レンチウイルスベクター導入から11日目には元の敷石状の形態からスピンドル様の形態へと変化していた。さらに培養を続けたところ、この効果は100日以上持続することが確認された。以上より改良阻害法は高いmiRNA阻害効果を持続的に発揮し、EMTをも誘導し得ることが示された。
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/div-host-parasite/Version1.html