標的遺伝子の同定:炎症性刺激Thrombin、VEGF、TNF-aを作用させた際に内皮細胞において誘導されるEgr転写因子ファミリーは内皮活性化において中心的な役割を果たす。今年度はEgr-1、Egr-3の新規標的遺伝子を見出すためChIP-seq解析を行った。Egr-1、Egr-3結合遺伝子については、ゲノムワイドに見た場合に大きな差異が認められず、多くが共通の制御下にあるものと類推された。Egr-3の新規標的遺伝子として、ChIP-seq法、及びsiRNAを用いたマイクロアレイ解析から、血管新生に関わるEts-1や細胞遊走に関わるRNDIを見出した。これら遺伝子の結合領域はプロモータ上のみならず、いずれも転写開始点から数十kb付近のアセチル化ヒストンが見られるオープンクロマチン領域に結合しており、遠隔的作用により転写を制御している可能性が推察された。以上の標的遺伝子に対して、結合領域、及びプロモータ領域をクローニングしてレポータ解析を行ったところ、Egr-3強制発現下での活性の上昇が見られた。また、RND1に対しては、転写因子NFATcによる活性の上昇も見られ、Egr-3、NFATcが協調してその転写を制御している可能性が示唆された。 個体レベルの解析:マウスEgr-3のzinc finger領域を有するexon2をloxP配列で挟み込んだコンディショナルターゲティングベクターを作製し、ES細胞へのターゲティングを行った。現在、G418/FIAU耐性ES細胞クローンを200余り単離し、PCR及びサザンブロッティングによるスクリーニングを行っている。Egr-1ノックアウトマウスについてはホモ化及び繁殖が進んでおり、機能解析への準備が整っている。
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