標的遺伝子の機能解析:昨年度Egr-3、NFATcの共通した標的遺伝子として見出したRho family GTPase 1(RND1)をsiRNAによりノックダウンし、その機能を解析した。2種類の異なる配列を標的としたsiRNAを用いて検討したところ、RND1の抑制により増殖・遊走・管腔形成能が著しく損なわれた。RND1はGTPase活性を持たず常にGTP共役型として存在し、p190 RhoGAPを介してRhoAの不活性化させるとの報告がある。この知見より、siRNAによるRND1ノックダウンにおいて、活性化型Rho Aのpull down assayを行ったところ、コントロールに比して活性化型RhoAが増加することが示された。RhoAを介した内皮細胞のバリア機能に影響を及ぼすことが推察されたことから、ボイデンチャンバーを用いた血管透過性の検討を行ったところ、RND1の非存在下では内皮バリア機能が損なわれた。以上より、Egr-3はNFATと協調してRND1の発現制御に関わっており、血管恒常性にかかわる機能を調節していることが明らかとなった。 個体レベルの解析:Egr-1ノックアウトについてB16メラノーマによる固形腫瘍モデルにて解析を行ったところ、野生型マウスに比してノックアウトマウスでは腫瘍進展に差異が見られなかった(preliminary data)。以前、我々はmiRNAを用いたEgr-3抑制下での固形腫瘍進展については血管新生阻害による腫瘍抑制効果があることを報告しており、本実験よりEgr-1、Egr-3間で個体レベルの機能に差異があることが示された。現在、Egr-3コンディショナルノックアウトマウスは作製段階であり、樹立次第マウス間での比較検討を行い、Egr-1、Egr-3のin vivoにおける差異がどのようなメカニズムによるものか明らかにしたい。
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