平成22年度は悪性リンパ腫幹細胞(lymphoma stem cell : LSC)の探索・同定のため、免疫不全マウスでの成熟リンパ系腫瘍(悪性リンパ腫)モデルの作製を行った。研究計画のとおり、細胞株ではなく悪性リンパ腫の患者検体を用いて、免疫不全マウスであるNOGマウスへの生着実験を行った。第一に、血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫(AITL)の患者検体をNOGマウスに移植した。AITL細胞はNOGマウスの肝臓、脾臓、骨髄など全身の臓器に浸潤し、その病変から得られた細胞は新たなNOGマウスへの継代が可能であった。病理組織像では血管新生を伴い、また血清中にヒト免疫グロブリンの産生がみられるなど、患者の臨床・病理像と類似していた。第二に、EBウイルス関連T細胞性悪性リンパ腫の患者検体をNOGマウスに移植した。腫瘍細胞はNOGマウスの肝臓、脾臓、腎臓などに浸潤し、その病変から得られた細胞はやはり新たなNOGマウスへの継代が可能であった。病理組織像では腫瘍細胞はT細胞マーカーのほかEBERが陽性であり、また血清中のAST/ALTといった肝酵素の上昇がみられるなど、患者と類似した臨床・病理像を示した。このように、NOGマウスに患者由来の腫瘍細胞を移植することにより、患者の臨床像、病理像に近い形で悪性リンパ腫のモデルマウスを作成することができた。NOGマウスを利用したモデルマウスは、悪性リンパ腫の病態解明、そしてLSCの探索・同定において非常に有用であると考える。平成23年度はさらに新たな悪性リンパ腫モデルマウスの樹立を行い、NOGマウスにおいて長期間にわたる造腫瘍能の高い悪性リンパ腫腫瘍細胞集団とそれ以外の集団のgeneticな相違をcDNA micro arrayで比較、解析する予定である。
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