平成23年度は、まず前年度に引き続き、悪性リンパ腫幹細胞の探索・同定のため、NOGマウスでの悪性リンパ腫モデルの作製を行った。研究計画のとおり、細胞株ではなく患者検体を用いて、NOGマウスへの生着実験を行った。まず、マントル細胞リンパ腫の患者検体をNOGマウスに移植し、腫瘍細胞は肝臓・脾臓・骨髄など全身の臓器に浸潤し、腹腔内にも巨大な腫瘤を形成した。またその腫瘍から得られた細胞は新たなNOGマウスへの継代が可能であった。我々はこの腫瘍細胞におけるCD9の発現に幅があることに着目し、磁気ビーズを用いて腫瘍をCD9陽性の細胞分画とCD9陰性の細胞分画にわけ、それぞれ細胞数を同じにしてNOGマウスへ移植し、造腫瘍能に差異があるか実験を行った。その結果、CD9陽性腫瘍細胞を移植した群と、CD9陰性腫瘍細胞を移植した群で、造腫瘍能に差異はみとめず、NOGマウスにおいて長期間にわたる造腫瘍能の高い悪性リンパ腫腫瘍細胞集団とそれ以外の集団を見出だし、それぞれのgeneticな相違をcDNA micro arrayで比較・解析するという研究実施計画を実行することはできなかった。一方、前年度に樹立した血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫のNOGマウスモデルについては、継代移植したマウス体内において形成された腫瘍と患者の腫瘍につきTCRクロナリティアッセイを施行した。その結果、患者の腫瘍と初代から4代目までのNOGマウスでの腫瘍はみな同一のクローンであることが示された。そして2代目以降は初代のマウスでみられたようなB細胞や形質細胞、γグロブリンの産生など、反応性の要素は消失しており、NOGマウス体内で腫瘍細胞が造腫瘍能を徐々に増強していったと考えられた。今後もNOGマウスにおいて長期間にわたる造腫瘍能の高い悪性リンパ腫腫瘍細胞集団とそれ以外の集団のgeneticな相違を解析していく予定である。
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