研究概要 |
[(1)微小環境構成細胞の解明]マウス骨肉腫細胞(AX)を皮下移植後に形成した骨肉腫からsingle cell suspensionを作成しFACS解析したところ、構成細胞は3つに分画された(CD45+(F4/80+)血液細胞、GFP+AX細胞、CD45-/GFP-分画)。CD45-/GFP-分画は死細胞も含んでおりSca1で分画したところ陽性分画には皮下の線維芽細胞が濃縮された。一方、よりヒトの病態に近いと思われる骨髄(大腿骨)内への移植の場合、免疫染色の結果F4/80+以外の血液細胞の集z簇が見られ微小環境の構成は移植部位により異なることが明らかとなった。[(2)腫蕩細胞と微小環境構成細胞の相互作用の解明]1.液性因子の解明:骨肉腫細胞が微小環境から受ける液性因子を解明するため上記で分取したF4/80+、CD45-/GFP-/Sca1+分画で高く発現し、かつAX細胞で発現の見られない因子をreal-time PCRで絞り込んだところ、Fgf1,2、Igf1、Lif、Hgfが候補として考えられた。Fgf1,2,Lif,Igf1に関しさらに解析を進めたところ、in vitroでAX細胞の増殖を促進し、骨分化を抑制することが明らかとなった。効果はFgf2が最も強く、これらの因子を混合したところ作用は増強した。全ての因子がErk1/2を活性化させたが、Fgf2の効果が最も強くFgfr・Mek阻害剤とFgfrのsiRNAを用いてErkの活性化を抑えたところ分化抑制は解除された。またFgf2とhifに関し徐放ビーズを使用しin vivoでの検討を行った結果、AX細胞の骨分化抑制にはErk1/2の活性化が重要であることが示唆された。さらにFgf2,Lif,Igf1は腫瘍細胞の遊走能を亢進させ、Fgf2はADRの感受性を低下させた。ADRとFgfr阻害剤の併用投与を担癌マウスに行ったところADR単独投与に比較して有意に腫瘍縮小効果を認めた。以上からFgf2など微小環境から放出される液性因子は分化抑制、増殖促進の面で骨肉腫の病態像形成に深く関与し、その阻害は抗癌剤への感受性を高める点で骨肉腫の治療法として有効である可能性が示唆された(上記の結果はMol.Cancer Res,2012に報告した)。
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