腫瘍細胞における嫌気的解糖系の構成的異常亢進(ワールブルグ効果)と関連する、解糖系酵素ピルビン酸キナーゼM(PKM)遺伝子スプライシング異常の意義と分子機構を明らかにすることを目的として、独自のシステム開発に取り組んだ;「1」"本来スプライシングが変換してM2が発現する場面(がん化等)においても、その代わりにM1が発現される"マウス(M1-ノックイン(KI)マウス)の作製に取り組んだ。遺伝子ターゲティングによるノックイン用ターゲティングベクター(TV)作製が完了した。次いでES細胞へ導入し、現在、相同組み換え体の単離を行っている。「2」レポーター遺伝子由来の蛍光タンパク(EGFP・DsRed)発現によってPKMスプライシングパターンをモニターできる細胞・マウスの作製に取り組んだ。レポーター遺伝子の基本カセットの作製が完了した。培養細胞への一過性発現の系で、このシステムの動作確認を行い、良好な結果を得た。次いで、このシステムを染色体に安定的に組み込んだ培養細胞を作製し、現在、動作確認を行っている。並行して、レポーター遺伝子のトランスジェニックマウス作製に向けて、コンストラクトの最適化(プロモーターやベクターの選択)に取り組んでいる。 これら取組みにより、スプライシング異常・ワールブルグ効果を標的とした新規がん治療・診断・予防開発に向け、次年度以降の研究展開に重要な独自システムの開発が大きく前進した。
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