がんを攻撃する免疫担当細胞であるT細胞を活性化することにより、がんを排除しようとする免疫療法は、副作用が少なく、長期的効果が期待されることから、有効な治療法として有望視されている。一方、がん患者では、がん細胞を攻撃するT細胞がうまく機能しないことが、免疫療法の障壁となっている。本研究課題で我々は、T細胞の活性化を抑制する細胞として注目されているミエロイド系抑制性細胞(MDSC)の、T細胞の機能的分化に対する影響を検討した。そして、MDSCが、腫瘍の増大を助ける炎症性サイトカイン、IL-6の供給源であることを見出した。このMDSCが産生するIL-6は、腫瘍を攻撃する上で重要な機能を果たすエフェクターT細胞への分化を著しく阻害することを発見した。この結果は、新たなMDSCの抑制メカニズムを示唆するものであり、MDSCおよびIL-6を標的としたがん免疫療法の効率化に、有用な情報を提供すると考えられる。
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