研究概要 |
難治性消化管間葉系腫瘍(GIST)は、既存の治療では千分な効果が得られず、新たな治療開発が待たれる。我々の基礎研究によれば腫瘍血管の支持細胞である周細胞を標的とするがんワクチン療法は、腫瘍細胞のMHC class Iの消失などもなく、また腫瘍抗原の多様性もないためがん免疫療法の重要な標的になりうる。その腫瘍間質に発現している標的抗原としてヘモグロビンβ1を基礎的研究で同定し、報告してきた。去年までの研究では胃GIST、大腸癌の手術摘出標本を用いた検討で、胃GISTにおいて腫瘍血管周細胞上にHBBの発現を10例中9例で認められるのを報告した。一方で、胃の非癌部の正常胃粘膜毛細血管では、HBB発現は認められず、また大腸癌手術摘出標本10例でも全例でHBBの発現は認められなかった。 今年度は、周細胞上に発現している免疫療法のHBB以外の標的抗原をコンピュウーター解析や過去の論文報告をもとに同定、解析した。周細胞上の抗原として、数種類の標的抗原の候補を同定した。これらを用いて、HHDマウスにB16腫瘍移植モデルを用いて治療した検討では、CD8+Tce11による抗腫瘍免疫を誘導するのにDLK1,HBB,NRP1,PDGFRβ,TEM1ペプチドなどが有効な抗原と考えられた。 in vitro assayであるが、正常健常人、メラノーマ患者血清からのCD8+T細胞の上記ペプチドへの反応性も強く認められ、固形腫瘍(GISTを含む)の腫瘍血管周細胞の標的抗原として非常に有望である可能性が示唆された。
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