研究概要 |
難治性消化管間葉系腫瘍(GIST)は、既存の治療では十分効果が得られず新たな治療法が待たれる。腫瘍排除に腫瘍特異抗原を標的とするのは効率が良い治療と考えられる。が、腫瘍細胞の免疫学的逃避機構、腫瘍抗原やHLA class I 発現低下があり,十分な特異的免疫誘導がされない可能性がある。一方で腫瘍血管を標的とした特異抗原の免疫誘導では、抗原の発現も安定し、HLA class Iの発現低下もなく強い抗腫瘍効果が期待出来る。我々は基礎実験において腫瘍血管周細胞にHBB1,TEM1, RGS5, PDGFRβなどの抗原の発現、エピトープ同定、腫瘍血管を標的とした免疫治療の可能性を報告してきた。(Komita H. Can Res. 2008. Zhao X.J Immunol. 2012.) GIST症例では腫瘍血管にHBB1の発現が9割近く認められたが、大腸癌腫瘍血管や正常胃血管ではHBB1の発現はみられなかった。免疫染色により、胃GIST腫瘍血管にEphA2の発現確認、TEM1は発現の可能性が示唆され、NRP1, DLK1などは発現頻度が低く、再検査が必要と考えている。GIST胃におけるHBB1の発現の局在を知る目的で免疫二重染色を行ったところ、腫瘍血管周細胞マーカーαSMAとHBB1の染色はほぼ重なって存在しており周細胞上にHBB1の発現が示唆された。今後他の周細胞マーカーなどを使用して免疫染色によりHBB1の発現を確定する。さらに、電子顕微鏡やin situ hybridizationによるHBB1発現同定の精査も検討する。腫瘍血管にHBB1が発現する原因として、腫瘍組織でのHIF-1αの発現増強にともない赤血球造成erythropoiesis、 血管新生angiogenesis を引き起こした可能性があり腫瘍血管でのHBB1発現のメカニズムに関しても研究継続する 。
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