研究課題
平成22年度までに構築した分析法を用いて、種々の実試料を分析した。そのうち有機酸分析の結果を元に主成分分析によるデータ解析を行った。ポリアミンのエキシマー蛍光分析:培養した白血病細胞9種および乳癌細胞3種を各1x10^6個採取し、過塩素酸にて細胞を溶解し、ポリアミン4種(Put、Cad、Spd、Spm)を分析した。その結果、内在性のPut、SpdおよびSpmを定量でき、いくつかの細胞株で特徴的なポリアミンの発現パターンがあることが分かったが、薬剤耐性や癌種、細胞の大きさ等との関連性を明らかにすることは出来ていない。有機酸のFSD-蛍光分析:2型糖尿病モデルTSODマウスと、比較対象としてTSNOマウスの24時間尿中有機酸を蛍光誘導体化後、オンラインFSD-HPLC分析したところ、酒石酸およびリンゴ酸を除く12種の各有機酸においてTSODマウスとTSNOマウスの間にはt検定において有意差(p<0.01)が認められた。その定量結果を元に主成分分析を行ったところ、スコアプロット上でTSODマウス群とTSNO群は離れた位置にプロットされ、それぞれの尿中に含まれる有機酸量に違いがあることが視覚的に示された。ローディングプロットでは乳酸、3-フェニル乳酸、ピルビン酸およびオキサロ酢酸等がPC1およびPC2に大きく寄与しており、これらはいずれも糖新生、解糖系に関与する化合物であることから、2型糖尿病モデル動物であるTSODマウスの糖代謝異常を有機酸レベルで示すことができる可能性が示唆された。Arg含有ペプチドの分析:Pyrene-4,5-dioneを用いてArgを2つ含有するニューロテンシンを誘導体化したところ、ジピレン誘導体は形成しておらず誘導体の分解物由来のエキシマー蛍光が確認された。本反応はアルカリ条件下で進行するが同時に分解も起こっており、ペプチドの分離検出が困難なため、今後ポストカラム誘導体化法を適用する。
3: やや遅れている
アミノ酸分析において、神経芽細胞に分化誘導剤処置を行い、アミノ酸メタボロミクスによる解析を行ったところ、分化誘導およびそれに基づく形態学的変化に寄与したアミノ酸を抽出することができなかった。また、ポリアミン分析についても各ポリアミン量と癌の状態の相関性を捕らえられていないため、ポリアミンのアセチル体測定法を確立し、患者血漿試料へと適用する必要がある。
ポリアミン分析については、癌患者尿中で見出されることが知られているジアセチルポリアミン測定法を確立し、癌細胞および患者血漿中アミノ酸メタボロミクスにファクターとしてポリアミンおよびアセチルポリアミンを加え、主成分分析による統計解析処理を施し、癌の状態を二次元グラフ上で視覚的に判断できる診断法を確立する。また、並行して神経芽細胞種のアミノ酸メタボロミクスおよびArg含有ペプチド分析法の開発も引き続き行っていく。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (17件) 備考 (1件)
Journal of Chromatography B
巻: 879(17-18) ページ: 1325-1337
DOI:10.1016/j.jchromb.2010.11.038
Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis
巻: 55 ページ: 176-180
10.1016/j.jpba.2011.01.011
Chromatography
巻: 32(Sub1) ページ: 139-140
Journal of Chromatography A
巻: 1218 ページ: 5581-5586
10.1016/j.chroma.2011.05.076
巻: 32(Sub2) ページ: 7-8
巻: 32(Sub2) ページ: 161-162
http://www.pha.fukuoka-u.ac.jp/user/bunseki/web/