研究課題
がん患者にアミノレブリン酸(ALA)を投与すると、腫瘍特異的にポルフィリンが蓄積されることが知られており、この現象を利用したがんの蛍光診断・がんの光線力学治療が臨床で用いられている。しかしながら、腫瘍特異的なポルフィリン蓄積の分子メカニズムは未だ解明されていない。そこで本研究はALA投与後の腫瘍特異的なポルフィリン蓄積メカニズムの解明を目的とし、特異的なポルフィリン蓄積に関わる生体内物質を同定する。本年度は、mRNA定量RT-PCR法のためのプライマー設計・標的分子の過剰発現または発現抑制株の樹立を行い、標的分子がポルフィリン蓄積に与える影響を評価した。ポルフィリン生合成に関連する12遺伝子のmRNA配列に特異的なRT-PCR用プライマーを設計した。5種類のヒト胃がん由来細胞株を用いて、RT-PCR法で各遺伝子の発現解析を行った。その結果、ALA投与後にポルフィリンを多く蓄積する細胞と蓄積しない細胞を比較した結果、ポルフィリン生合成酵素発現量はほぼ同一であることが分かった。しかしながら、ペプチドトランスポーターPEPT1およびATP-binding cassette(ABC)トランスポーターABCG2の顕著な発現変化が認められ、ポルフィリン蓄積にはトランスポーターの発現が大きく関わることが強く示唆された。これらのトランスポーターはALAの取り込み並びにポルフィリン排出に関わっていると推測される。現在、これらの過剰発現株・発現抑制株を樹立し、その機能の解析を行っている。また、アミノレブリン酸の投与後は好気代謝能が亢進することが明らかとなった。具体的には好気代謝で重要な役割を果たしているミトコンドリア内の複合体IV活性が1.5倍も上昇することが分かった。腫瘍内部では好気代謝が大きく阻害されていることを考え合わせると、ALA投与後の腫瘍特異的なポルフィリン蓄積は好気代謝能の低下から惹起される現象であるということも示唆された。さらに、これらの現象を利用した新たながんの検診技術も提案し、新聞発表等大きな反響を得た。
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