研究概要 |
1.まず,in vitro cell counting kit(WST-8)を用いて,Notchシグナルのリガンドの一つであるDelta-like 4の中和抗体の投与による6種類のヒト悪性中皮腫細胞の増殖への影響を検討した結果,3日目の時点に低用量(50μg/ml)では,約20%;高用量(500μg/ml)では約70-80%の細胞増殖の抑制が見られた.また,用量依存性(50μg/ml,100μg/ml,200μg/ml,and 500μg/ml)の細胞増殖の抑制も観察された.更に,BrdU/7-AAD kitを用いた細胞周期解析により,1日目の時点に高用量(500μg/ml)はDNA合成期の細胞が約30%(無添加:15%;500μg/ml Delta-like 4の中和抗体:4.5%)抑制された.これらの結果から,Delta-like 4の中和抗体は細胞周期(特にDANの合成)の抑制により,細胞の増殖を抑制したことが示唆された. 2.上述の結果に続いて,増殖の抑制のメカニズムを検討するために,Western blotting analysisを用いて,癌抑制遺伝子p53に注目し,Delta-like 4の中和抗体の投与による影響を検討した.1日目の時点に用量と関係なく,約20%の活性化p53の発現の増加が観察された. 3.最後に,in vivoの腫瘍の生長へのDelta-like 4の中和抗体の投与による影響を検討するために,SCIDマウスと1種類のヒト悪性中皮腫細胞(予備実験により,6種類の細胞の中に1種類だけマウスの体で生長できることを確認した)を用いて,ヒト悪性中皮腫のマウス皮下モデルを作製した.5日後から,100mg/kg/dのDelta-like 4の中和抗体の腹内投与を行なった.1週間後から毎日癌の大きさを測り,20日後にマウスを殺した上で癌を取り出し,重さを測った.約5-10%の癌の生長の抑制が観察された. 今後,in vitro詳しいメカニズムとin vivoサンプルの解析及びヒト悪性中皮腫胸腔モデルへの影響を検討する予定である.
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