研究課題
小細胞肺がん(SCLC)の高転移能に着目し、その分子機構を解明し、転移抑制を目ざすための基礎的検討を行った。まず、SCLCに特異的に発現するCADM1のスプライシング・バリアント8/9がSCLC手術組織35例中10例(29%)に発現すること、SCLC細胞16例中、壁非依存性増殖を示す14例全例で発現するのに対し、壁依存性増殖を示す2例では全く発現しないことを確認した。次いで、CADM1非発現SCLC細胞にCADM1を導入すると、ヌードマウス皮下における腫瘍原性を有意に促進すること、一方CADM1高発現SCLC細胞で、siRNAによりその発現を抑制すると、スフェロイド様増殖が部分的に抑制されることを見出し、CADM1バリアント8/9がSCLC特異的な診断、治療マーカー候補であることを示した(文献1)。次に、SCLC細胞におけるCADM1下流分子経路に着目して、ATL細胞で同定したCADM1下流因子で、RAC活性化機能を有するTiam1とその類似分子Tiam2の発現を検討したところ、CADM1と相関する発現様式を認めたが、免疫沈降法によるCADM1とTiam1、Tiam2との結合は見出せなかった。一方、固相化CADM1上での細胞伸展性を指標とする独自の検索法により、CADM1経路阻害因子として同定したPI3K阻害剤LY294002について、SCLC細胞への効果を検討したところ、一定の増殖抑制効果を示し、また、CADM1からPI3Kに至る経路上の分子群についてもSCLCで高発現することを見出した。しかしPI3K阻害剤のSCLC細胞に対する効果は、他の腫瘍細胞と差異を認めないことから、さらなる特異的な治療が必要であることが示唆された。また、レチノイン酸がCADM1遺伝子の転写を活性化すること(文献2)、乳癌ではCADM1が癌抑制的に機能することを報告した(文献3)。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
Cancer Science
巻: (掲載確定)
10.1111/j.1349-7006.2012.02277.x
Genes to Cells
巻: 16 ページ: 791-802
10.1111/j.1365-2443.2011.01525.x
Breast Cancer
10.1007/s12282-011-0272-7